Column Article
2025.04.28
何故SRVを使うのか
「摩擦摩耗試験機を扱う上で必要なこと」
トライボロジーの第一人者である曽田範宗先生は「トライボロジの試験研究について」次のような言葉を残されています。 「トライボロジー研究に関する試験機,測定機がかかわる現象の中で最も重要な評価点は,摩擦の大小,焼付き限界点の高低,摩耗の大小,疲労剥離寿命(疲労寿命)の長短の4点が真っ先に挙げられよう,しかし上に挙げた評価点の現象をみると,その値はばらつき易くかつきわめて不安定であるのが普通で,むしろこのトライボロジー関連値の特定しにくさと,不安定さの中にこそトライボロジーの実態があるともいえるの である」*1) つまり、摩擦・摩耗試験を行う際には常に「ばらつき」や「不安定さ」が付きまとうことを念頭に置き、試験を計画・実施することが求められます。SRV®について
当社が取り扱っているSRV®試験機はドイツのOptimol Instruments社が開発した試往復摺動式の摩擦・摩耗験機です。SRV®とはドイツ語における「Schwingung/オシレーション」、「Reibung /摩擦」、「Verschleiß/摩耗」の頭文字を取った略語です。 その名が示す通り、SRV®は往復摺動運動を行う摩擦・摩耗試験機であり、「オシレーション試験」の代名詞ともいえる存在です。 トライボロジー学会など、国内外の学術会議や研究発表の場でも頻繁に使用されており、試験結果の再現性に起因する極めて高い評価と信頼を得ている著名な試験機です。「デファクトスタンダード試験機としてのSRV
東京理科大学佐々木信也教授は著書『はじめてのトライボロジー』において、摩擦・摩耗試験は、材料強度試験に比べてデータの汎用性が低 く、ばらつと再現性の課題が残ため、その解決には、目的に応じた標準試験機の選定と使用が不可欠であると述べています。2) 加えて、下記の様にも述べています。 「一方,より汎用性のある試験法の確立を目指し,同一もしくは同種の試験機を用いてデータのばらつきを極力抑えるための取り組みも進 められている*2)。その前提になるのは,世界的なシェアを持つ市販装置の存在である。市販装置がデファクトスタンダードとして認識される ようになるには,評価目的に応じてその試験機に最適な試験法の標準化が進められる必要がある。同一試験機使用の利点は,試験条件の検証 可能なデータが複数の機関から集められるという点にある。 複数ユーザーの参加によりデータ解析や実機との対応付けなどの高度なノウハウの蓄積と共有化が進むことにより,デファクトスタンダード としての地位が築かれていくことになる。このようなデファクトスタンダード試験機で重要になるのは,オペレータに依存しない正確なデー タ取得が常に可能であることを証明することである。そのため,デファクトスタンダード機のひとつであるSRV試験機の場合,毎年,国際的 な規模でラウンドロビンテストを実施し,装置メンテナンスの徹底とヒューマンエラー排除のための試験マニュアルの更新などを同時に推進 することで,データの品質を担保する仕組みを確立している。」2) 事実、SRV®では毎年、開発元であるOptimol社が事務局を務める国産的なワーキンググループによるラウンドロビンテストにより、試験結果 の検証と試験手法の妥当性が確認されています。 こうした地道な試験の積み重ねにより、SRV®は業界内でデファクトスタンダードとしての地位を確立し、数多くの国際規格の認証を取得して います。
〈参考文献〉
*1) 神鋼造機webサイト掲載「曽田範宗博士の原稿」を参照
https://www.kobelco-machinery-engineering.co.jp/shinko_jp/shikenki/pdf/manuscript.pdf
*2) 佐々木信也ほか,はじめてのトライボロジー(2013),講談社,P.160より抜粋
*1) 神鋼造機webサイト掲載「曽田範宗博士の原稿」を参照
https://www.kobelco-machinery-engineering.co.jp/shinko_jp/shikenki/pdf/manuscript.pdf
*2) 佐々木信也ほか,はじめてのトライボロジー(2013),講談社,P.160より抜粋
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